エアコンの暖房が効かなくなってしまった場合の修理費用の相場は、比較的新しいエアコンの場合で1~3万円程度、10年以上経過した場合は3~5万円ぐらいになるのが一般的です。
ただ、エアコン修理は不具合症状や故障原因によって修理内容が大きく変わってくるため、症状や原因によっては安く抑えられたり、逆に買い替えたほうがお得になったりすることもあります。
ここでは、エアコン故障症状別の修理料金相場と買い替え費用との比較を行っていきます。
この記事の監修者「taichan」
エアコンの困った解決!15年以上の実績を持つ空調のプロ「taichan」があなたの快適な暮らしをサポートします。大学院でヒートポンプの研究を行い、特許も複数取得。大手電機メーカー勤務後はエアコン取付修理の実務経験も積んでいます。エアコン選び、使い方、故障・トラブル、クリーニング、省エネまで、どんなお悩みにもお答えします。【保有資格】電気主任技術者、電気工事士、冷凍機械責任者など
生ぬるい風が出てくる(冷媒ガス漏れが原因)
ルームエアコンの配管内にはおおよそ1kg前後の冷媒ガスが封入されています。
何らかの理由でこの冷媒ガスが漏れて少なくなってしまった場合、室内機の中にある熱交換器の温度を高くすることができなくなり、吹き出される温風の温度が下がってしまいます。
夏場にガス漏れしたエアコンで冷房運転の場合、室外機の配管(細い方)が氷点下以下まで温度が下がって霜が発生して真っ白くなるため、ガス漏れしていることがわかりやすいのですが、冬場の暖房の場合はこれらの配管は高温になる箇所となるため、そういった目視によるガス漏れ判定はできません。
ガス漏れの有無を判定する方法としては、専用のゲージマニホールドという圧力計を使って暖房運転時の冷媒ガスの高圧圧力を測定したりするのですが、専用の測定器具が必要となりますし、高圧ガスの取り扱いに危険が伴います。
基本的には、室内機から吹き出される温風の温度が高くない(生ぬるい風が出てくる)という場合は、暖房が効かない原因はガス漏れの可能性が高いと判断してもいいでしょう。
冷媒ガス漏れの原因の多くは配管接続部からの冷媒漏れとなります。
家庭用のエアコンはフレア加工を施した銅管をフレアナットで締め付けながら圧着接続する方式を採用しています。
この接続方法は、フレア加工した銅管をフレアナットで締め付けて変形させながら圧着させるため、基本的には冷媒漏れが発生しにくい構造になっています。
ただ、完全完璧にガスがもれない構造ではないため、稀に施工不良や中古品購入、引っ越しなどでの配管の使い回し(フレア加工部の再使用)、配管を接続したままエアコンを動かしたなどが原因で、接続不良を起こして冷媒が漏れてしまうことがあります。
家庭用エアコン場合、冷媒漏れを起こしやすい冷媒配管の接続部は室内機側と室外機側の2箇所となります。
室内機側の配管接続部
室外機側の配管接続部
ほとんどのガス漏れは配管継手辺りからのスローリーク(少しづつガス漏れする状態)であることがほとんどのため、当日その場で修復可能なケースが多いです。
修理料金の相場
冷媒ガス漏れ修理を依頼した場合の相場は、以下の通りとなります。
暖房の効きが悪い (生ぬるい風しか 出てこない) | 【故障原因】冷媒ガス漏れ(継ぎ手部分) 【修理方法】ガス漏れ修理(フレア加工)とガスチャージ 【料金相場】1~3万円 【故障原因】冷媒ガス漏れ(配管パーツの腐食など) |
※修理費用の相場はメーカーサポートに依頼した場合のおおよその金額となります。
暖房の効きが悪い(一応は温風が出ている)というレベルの場合、冷媒ガスが少しづつ漏れていっているケース(配管継手部分からの漏れ)がほとんどですので、修理費用が高額になることは比較的少ないと考えてよいでしょう。
万が一、腐食などが原因で熱交換器や圧縮機などのパーツからのガス漏れが発生した場合でも、冷媒回路のメーカー保証が5年となっている事が多いですので、一度保証書の方も確認しておくのがいいでしょう。
買い替え費用との比較
冷媒ガス漏れによってエアコンの暖房が効かなくなってしまった場合、通常は買い換える(5~27万円)より修理(1~3万円程度)をしたほうが安くつくことが多いでしょう。
ただし、現場見積もりで修理費用が高額(ロウ付け作業を伴う部品交換が必要)ですでに保証期間も過ぎてしまっている場合は、買い替えも検討していく必要があります。
すでに10年以上経過したエアコンの場合は、故障原因が別にあったとしても圧縮機の経年劣化も進んできていますので、最初から買い替えを検討してもいいでしょう。
費用の相場 | |
修理 | 約1~17万円 |
買い替え | 約5~27万円 |
生ぬるい風が出てくる(室外機の汚れが原因)
エアコンの室外機はたっぷりと吸い込んだ外気の熱を冷媒の中に取り込むことによって、室内機側で高温の空気を吐き出すことができるようになります。
ただ、室外機のフィン部にホコリ等が溜まってしまって十分な空気を吸い込むことができなくなった場合、冷媒ガスに十分な熱を取り込むことができず、最終的に室内機側の吹き出し空気温度が下がってしまう結果となります。
基本的には室外機はノーメンテナンスでいける場合が多いのですが、置かれている場所によってはペットの毛や洗濯物のホコリなどが室外機の裏側のアルミフィン部に大量に付着して風の通り道を塞いでしまっていたりすることがあります。
室外機の裏側に掃除をするための隙間があるような場合は、ブラシなどを使ってアルミフィンの汚れを取り除いてあげましょう。
ただし、アルミフィン部は手を切ってしまいやすいですし、掃除しやすくするためにエアコン配管をつなげたまま室外機を動かしてしまうとガス漏れの原因となってしまうこともありますので注意が必要です。
なお、室外機の汚れを本格的にきれいにしたい場合、室外機を分解してアルミフィンの表側から裏側に向かって高圧洗浄機で水をかけて汚れを落としていく必要がありますが、エアコン室外機の内部は高電圧(数百ボルト)が流れていますので万が一感電した場合大変なことになりますので、素人が分解洗浄するのはとても危険です。
こういった場合は、エアコンクリーニング業者に室外機の洗浄クリーニングの見積りをお願いしていきましょう。
修理料金の相場(エアコンクリーニング)
内容 | 料金相場 |
室内壁掛け1台 | 8~9千円 |
室内壁掛け1台 (お掃除機能付き) | 1.4~1.6万円 |
室外機洗浄 (オプション) | 3~4千円 |
基本的に、室外機のクリーニングは室内機のエアコン洗浄のオプション扱いとなっていることが多いです。
後ほどお話する室内機の風量低下もある場合は、室内機の洗浄と合わせて行ってもらうのがいいと思います。
買い替え費用との比較
室外機の汚れが原因の場合、通常は買い換える(5~27万円)より修理(エアコンクリーニング、1~2万円程度)をしたほうが安くつくため、特別な理由がない限りは修理をしたほうがいいでしょう。
費用の相場 | |
修理 | 約1~17万円 |
買い替え | 約5~27万円 |
生ぬるい風が出てくる(圧縮機の摩耗劣化が原因)
室外機の中にある圧縮機(コンプレッサー)が経年劣化してしまうと、冷媒ガスをうまく圧縮して高温にすることができなくなり、その結果、室内機から吹き出される温風の温度が低下してしまいます。
この経年劣化による性能低下は年に3~4%と言われているため、単純に考えると、エアコン設置から10年も経過すればエアコンの能力(≒効率)は30~40%も低下してしまっていることになります。
最近のエアコンは圧縮機の回転数を調整することができるため、少々の性能低下であれば圧縮機の回転数を上げることでカバーしていくことができるできるのですが、極端に圧縮機の効率が落ちてしまうと、いくら圧縮機が頑張っても(電気をたくさん使って圧縮機を回しても)、室内機から吹き出される風の温度が上がらず、部屋を温めることができなくなっていきます。
特に、外気温が氷点下以下になっているような状況の場合、こういったエアコンの性能劣化が原因でエアコンが効かないというケースが目立ちます。
もう10年以上エアコンをしっかりと使ってきた場合、圧縮機の摩耗によるエアコンの性能低下が暖房の効きが悪くなる原因となっている可能性が高いでしょう。
修理費用の料金相場
圧縮機を交換する場合の修理料金の相場は以下の通りです。
症状 | 故障原因と修理費用相場 |
暖房の効きが悪い (生ぬるい風しか 出てこない) | 【故障原因】室外機内にある圧縮機の経年劣化 【修理方法】圧縮機の交換修理(ロウ付け) 【料金相場】8~17万円 【備 考】10年以上経過したエアコンに多い |
※修理費用の相場はメーカーサポートに依頼した場合のおおよその金額となります。
費用が高額になってしまう原因は、圧縮機の取り外しや取り付けの際にロウ付け作業が必要になるためとなります。
買い替え費用との比較
家庭用のルームエアコンの場合、圧縮機の交換修理はロウ付け作業が発生するため、高額になってしまうことがほとんどです。
すでに購入から10年以上が経過しているような場合は、圧縮機の性能劣化による不具合が発生してくる頃ですので、買い換える方向で検討してくのが経済的です。
費用の相場 | |
修理 | 約8~17万円 |
買い替え | 約5~27万円 |
風量が弱い(室内機の汚れが原因)
室内機のエアコンフィルターにホコリがたくさん積もってしまっている場合、それが風の通りを邪魔してしまってエアコンから吹き出される風が弱くなってしまいます。
上記のフィルターは、前回掃除してから2週間ほど経過したものですが、この状態でも風量は1~2割程度低下してきます。
フィルター掃除を全くしていないような場合だと、フィルターの上にホコリがフェルト状に数ミリも積もってしまっていて、ほとんど風が通らずエアコンの能力が大幅に低下しているケースもよく見かけます。
エアコンは部屋の空気を吸い込んで温めて吐き出す事によって暖房する仕組みとなっていますので、エアコンフィルターの汚れは暖房の効きに直結します。
フィルターが汚れているような場合は、掃除機などでホコリを吸い取ったり、水洗いしたりしてフィルターを掃除してみてください。
カビ汚れがひどい場合は、カビキラーなどを吹きかけて5分ほど放置し、その後よく水で洗い流し、しっかり乾燥させてからエアコンに取り付けます。
これまでエアコンフィルター掃除をしたことがないという場合は、これだけでエアコン暖房の効きが復活する場合もありますので、ぜひ一度試してみてください。
エアコンの風量が低下してしまう原因は、フィルター以外にも内部の汚れが原因になってしまっていることがあります。
例えば、エアコン室内機のカバーを開いたところに見えているアルミフィン熱交換器にカビ汚れなどがびっしりと付着してしまっているような場合、この隙間を通る空気の邪魔になるため、エアコンの風量が落ちてしまいます。
この他にも、吹出口の奥の方に見える送風ファンのフィンとフィンの間にホコリやカビの汚れがついてしまっている場合も、エアコンの風量は低下してしまいます。
写真ぐらいの汚れであればそれほど暖房能力に影響することはありませんが、もう何年もエアコンクリーニングを行っていないような場合、送風ファンの空気流路を完全につまらせてしまっているというケースもあったりします。
これはエアコンは全力で運転している(ファンはブンブンと音をたてて回っている)のに暖かい風がちょっとしか出ていないような状況です。
これらの例のように、エアコン内部まで汚れて風通りが悪くなってしまっているような場合は、エアコンクリーニングを業者に依頼して、アルミフィンや送風ファンの汚れを取り除いてもらうのが効果的です。
エアコンクリーニング業者が使っている洗浄ポンプでフィンの奥にある汚れまでスッキリ取り除くことができれば、暖房運転時の風量がアップして暖房能力が復活します。
修理費用の相場(エアコンクリーニング)
内容 | 料金相場 |
室内壁掛け1台 | 8~9千円 |
室内壁掛け1台 (お掃除機能付き) | 1.4~1.6万円 |
室外機洗浄 (オプション) | 3~4千円 |
買い替え費用との比較
室内機の汚れが原因の場合、通常は買い換える(5~27万円)より修理(エアコンクリーニング、1~2万円程度)をしたほうが安くなる事がほとんどです。
エアコンは室外機の汚れも暖房の効きに大きな影響を与えますので、この際、室外機のクリーニングも同時に行っておくのがベターです。
費用の相場 | |
修理 | 約1~2万円 |
買い替え | 約5~27万円 |
冷たい風が出てくる(四方弁の故障が原因)
エアコンは室外機の中にある「四方弁」と呼ばれる弁を切り替えることによって冷媒の流れを変えることによって、冷房運転と暖房運転を切り替えています。
冷房運転時の冷媒の流れ
暖房運転時の冷媒の流れ
四方弁は弁のONとOFFを切り替える電磁コイルに電気を流したときに暖房の回路に、電磁コイルに電気が流れていないときは冷房の回路となるのが一般的です。
冷房回路のまま弁が固着してしまっていたり、電磁コイルが故障して弁を切り替えることができなくなってしまった場合、エアコン本体は暖房運転をしようとして四方弁を暖房回路に切り替えたつもりでも、実際の四方弁は冷房回路のままになってしまいます。
この四方弁故障の場合、不具合が出るのは暖房の場合のみで、冷房の場合は特に問題なく動くというのが特徴です。
一般的に四方弁が故障した場合はエアコンの方にエラーコード表示が表示され、動作停止してしまうことが多いですが、エアコンが故障を検知するまでに時間がかかってしまう場合があります。
暖房をつけたのに温かい風ではなく冷たい風が出てきているという場合は四方弁の不具合が疑われます。
修理費用の料金相場
四方弁故障の場合の修理料金の相場は以下のとおりです。
症状 | 故障原因と修理費用相場 |
暖房が全く効かない (冷たい風が出てくる) | 【故障原因】電磁コイル(四方弁)の故障 【修理方法】電磁コイルの交換 【料金相場】1~3万円 【故障原因】四方弁本体の故障 |
※修理費用の相場はメーカーサポートに依頼した場合のおおよその金額となります。
単純に電磁コイル側の故障(レアリークやサビなどによる経年劣化の場合が多い)であれば電磁コイルを取り替えるだけで修理は完了します。
電磁コイルの方は故障していないけれども、四方弁本体のほうが故障してしまった場合は溶接(ロウ付け)を伴う交換修理が必要となります。
ロウ付け作業が伴う部品の交換修理は高額になってしまいますので、注意が必要です。
買い替え費用との比較
暖房時に冷たい風が出てくる不具合の殆どは電磁弁コイルが原因です。
その場合、修理費用は1~3万円ほどとなりますので、修理してもらったほうが安くつくでしょう。
費用の相場 | |
修理 | 約1~17万円 |
買い替え | 約5~27万円 |
ただし、稀に四方弁本体が故障してしまっているケースもあり、この場合は交換修理にロウ付け作業が発生するため、修理費用が高額になってしまういます。
この場合、エアコンの買い替えも検討したほうがいいでしょう。
途中で止まってしまう(基盤やモーターなどの部品故障が原因)
エアコン暖房をしていると途中で室内機の電源ランプやタイマーランプなどが点滅して、温風が出なくなり全く動かなくなってしまったというような場合、エアコン本体に何らかの異常が発生したことが原因でエラー停止している可能性があります。
エアコン修理の方法としては、エラーコードの確認やエアコンの点検を行い、故障しているパーツを特定し、交換修理していくという流れになります。
修理費用の料金相場
交換部品がちょっとした部品(温度サーモや基盤など)だけの場合、修理費用は1~4万円ほどとなります。
症状 | 故障原因と修理費用相場 |
途中で止まってしまう (エラーコード表示) | 【故障原因】基盤やモーターなどの故障 【修理方法】部品交換 【料金相場】1~17万円 |
ただし、先程まででお話してきたような圧縮機の故障や、熱交換器などからの冷媒ガス漏れが原因でエラー停止しているような場合は、部品交換にロウ付け作業が発生するため、修理費用が高くなってしまう場合もあります。
買い替え費用との比較
エアコンが途中で止まってしまう故障のほとんどは温度サーモや基盤の故障ですので、修理費用は1~4万円ほどとなりますので、修理してもらったほうが安くつくでしょう。
費用の相場 | |
修理 | 約1~17万円 |
買い替え | 約5~27万円 |
ただし、稀に圧縮機や四方弁本体が故障してしまっているケースもあり、この場合は交換修理にロウ付け作業が発生するため、修理費用が高額になってしまういます。
上記のような場合、エアコンの買い替えも検討していったほうがいいでしょう。
まとめ
エアコンの暖房が効かなくなってしまった場合の修理費用の相場は、比較的新しいエアコンの場合で1~3万円程度、10年以上経過した場合は3~5万円ぐらいになるのが一般的です。
調子が悪いまま暖房を使い続けてしまうと完全にエアコンが効かなくなってしまいますので、早めにエアコンの点検をしてもらうことをおすすめします。